英語と一括りにいっても、様々なバリエーションがあります。
日本では、「英語」というと一般的にアメリカ英語のことを指すことが多いですが、日本やアメリカ以外で英語を習得した人たちにとっては、「英語」といっても必ずしもアメリカ英語を指すわけではありません。私自身ヨーロッパで英語を勉強したので、この仕事に就くまでは、英語=イギリス英語という感覚でいました。
イギリス英語やアメリカ英語をはじめとするそれぞれの英語では、スペルが違ったり、場面に応じて使う用語が異なったりする場合があるので、違いを把握しておくことが重要です。
違いがわからないまま日英(和文英訳)の翻訳やチェックをすると、同一ドキュメント内のアメリカ英語ネイティブとイギリス英語ネイティブの担当した部分でスペルや表記ルールがバラバラ・・といったことになるケースも。
そこで今回の記事では、翻訳やチェックをする際にこれだけは頭に入れておいてほしい、アメリカ英語とイギリス英語の違いに関するポイントを4つ、ご紹介します。
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ご存知の方も多いと思いますが、アメリカ英語とイギリス英語では、同じ単語でもスペルが違うものが多くあります。スペルに関しては、ワードなどの文章校正機能で言語設定を正しく行うことで、間違いを防ぐことができます。
ボキャブラリーの違いは少しトリッキーですが、日常会話でも使うような以下の類の違いは最低限抑えておきたいところです。
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日本語 |
イギリス英語(BrE)
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アメリカ英語(AmE)
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1階
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ground floor
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first floor (BrEで”first floor”は2階になる) |
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休暇
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holiday
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vacation
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学期
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term
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semester
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サッカー
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football
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soccer
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また、アメリカとイギリスではそれぞれ学校制度が違い、日本の学校制度とも異なりますので、翻訳する際には安易に言葉を置き換えてしまわないように注意する必要があります。
例として、「小学校」はBrEではPrimary schoolで、5~11 歳までの児童が通う学校を指します。対して米国では、Elementary schoolになりますが、州によって6年制と8年制があり、通い始める年齢も6歳からとなっています。
AmEでは、集合名詞は基本的に単数として扱われます。その一方で、BrEでは単数として扱われることも、複数として扱われることもあります。
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AmE The team is investigating the case. BrE The team are investigating the case. |
知らずに集合名詞を複数として訳出している場合、米語ネイティブにとって違和感のある文章になってしまう可能性がありますので注意が必要です。
ただし、The Chicago Manual of Styleに以下のような項目もありますので、アメリカでは単数を好む強い傾向があるものの、内容によっては複数として扱うこともあるようです。
When the subject is a collective noun conveying the idea of unity or multitude, the verb is singular {the nation is powerful}. When the subject is a collective noun conveying the idea of plurality, the verb is plural {the faculty were divided in their sentiments}.
(5.138: Agreement in person and number, The Chicago Manual of Style. The University of Chicago Press, 2017.)
AmEとBrEの大きな違いの中の一つに、過去分詞の差異があります。その中でも、覚えておきたいのがgetです。
AmEでは、gottenとなりますが、BrEではgottenという形はもう使われておらず、gotになります。
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AmE She’s gotten very angry. BrE She’s got very angry. |
以下のようなものも、意外と見過ごしやすいのではないでしょうか。
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原型
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過去分詞(BrE)
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過去分詞(AmE)
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spill
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spilled/spilt
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spilled
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smell
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smelled/smelt
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smelled
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prove
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proved
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proved/proven
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learn
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learned/learnt
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learned
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AmEとBrEでは身近な言い回しでも前置詞が異なるものがあります。
メジャーなものをいくつかピックアップしました。
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BrE
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AmE
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at the weekend
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on/during/over the weekend
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play in a team
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play on a team
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I'm writing to Megan
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I'm writing Megan/ I'm writing to Megan
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Monday to Friday
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Monday through Friday/ Monday to Friday
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to enrol on a course
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to enroll in a course
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different from/ to
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different from/ than
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他にも検索すると一覧表が出てきますので、一度目を通しておくと気を付けるべきところがはっきりすると思います。特に下線を引いた例文は英国では完全に無い言い回しらしいので、どちらかの国で違和感が強いものは(他の言い方がある場合)避けるのが無難ですね。
AmEでは終わりにピリオドがつくのに対して、BrEではつきません。
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AmE Ms . Mr . Dr . St .
BrE Ms Mr Dr St |
アメリカでは月/日/年の順番で日付を表しますが、イギリスや他のヨーロッパ各国では日/月/年で表記するのが一般的です。
アメリカ英語とイギリス英語の違いで意外に知られていないのが、引用符に関する違いではないでしょうか。
直接話法を使って発言を訳出するときや何かを引用するときなど、翻訳時にクオテーションマーク(引用符)を使用することは多いと思います。
直接話法で訳出する際にAmEでは必ずダブルクオテーションを使いますが、BrEではシングルクオテーションを使用しても問題ないというルールになっています。発言の中で別の発言に言及する場合など、AmEでは初めの発言でダブルクオテーションを使い、クオート内部の引用部分はシングルクオテーションで囲みますが、BrEではこれを反対にしても問題ありません。
実際に例を見てみましょう。
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AmE She said, “Never say ‘never.’” BrE She said, ‘Never say “never”’. |
上記の例でも明らかですが、もう一つの違いはカンマやピリオドといったパンクチュエーションマークの位置です。AmEではカンマやピリオドをクオテーションマークの中に入れるのに対して、BrEでは基本的にクオテーションマークの外に出します。クオテーションマークやパンクチュエーションに関するばらつきは普段の業務でもよくみかけますので、心当たりがある方は今一度、チェックするようにしましょう。
最後に、BrE/AmEの違いから発生するドキュメント内の表記の揺れで、個人的によく見るものをランキングにしてみました。
細かい違いを細部まで理解するのはなかなか難しいと思いますが、どのような違いや注意点があるか、大体でも把握していると、クリティカルなミスをすることはないと思います。奥の深い翻訳ですが、少しずつでも知識をつけていくことで世界が広がるはずです。
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