「品質」という言葉は、日常でも使われることが多い言葉かと思います。しかし、その意味するところをよく考えてみると、使う人によって異なっていることが少なくありません。特にビジネスの上では、関係者間で品質に関する認識に齟齬があると、トラブルの原因になる恐れがあります。
これは翻訳においても同様です。この記事では、翻訳サービスにおいて「品質」とは何か、品質を「保証」する、「管理」するとはどういうことかを考えてみたいと思います。
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上記のとおり、「品質」という言葉はさまざまな意味で使用されます。たとえば、「高品質なパソコン」と聞いて、どのようなパソコンを思い浮かべるでしょうか。
「動画編集などもストレスなくできる」「バッテリーが長持ちする」「グラフィックの性能がよい」「キーボードが打ちやすい」など、人によって答えが異なるのではないかと思います。これは、パソコンに何を期待するか、パソコンをどのような用途で使用するかが異なるためです。つまり、品質がよいかどうかは、その製品やサービスの受け手の要求やニーズを満たしているどうかで決まる、と言えます。
それでは、翻訳サービスにおいて「品質」とは何でしょうか。「誤訳がない」「スタイルガイドに従っている」「日本語が読みやすい」など、これもさまざまな答えが出てくるかと思います。しかし、この認識がお客様と翻訳会社で異なっている場合、翻訳成果物をめぐって問題が生じるかもしれません。
そのため、まずはお客様の期待や要望、つまりお客様がどのような翻訳を必要としているかを事前に明確にすることが欠かせません。この点を踏まえて、翻訳サービスにおける「品質」を定義すると、以下のようになります。
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翻訳サービス(翻訳成果物)が、関係者間(例: お客様と翻訳会社)で事前に合意した仕様を満たす度合い
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「仕様」という言葉が出てきたため、この言葉についても説明します。「JTF翻訳品質評価ガイドライン」では、以下のように定義されています。
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クライアントや最終読者のニーズや目的などに基づき、翻訳成果物が持つべき要件をまとめたもの
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仕様の例としては、以下が挙げられます。なお、どのような情報が必要かについては、弊社の関連ブログ「翻訳会社との上手な付き合い方 Vol 4 ~見積り依頼~」でも説明しています。
つまり、翻訳の「品質」とは、事前に合意したこのような事項(仕様)によって表されたお客様の要求をどの程度満たしているか、その度合いということになります。
品質を定義したところで、次は品質を「保証」するとはどういうことかを考えてみたいと思います。品質保証は以下のように定義できます。
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事前に合意した発注者の要求(=仕様)を満たすことを確実にし、実証するために、受注者が行う体系的活動
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定義のみだと抽象的でわかりづらいかもしれないため、具体的に説明します。翻訳プロジェクトには、見積から納品までに複数の工程があります。それぞれの工程において、仕様を満たすことを目的として部門や担当に応じて異なる活動を行います。その活動の体系が品質保証です。翻訳の標準的なワークフローは以下のようになります。
品質保証を実現するために実施する具体的な活動が品質管理活動です。上記のとおり、各工程で事前に合意した発注者の要求を満たすために必要な活動を行います。たとえば、以下のとおりです。
【翻訳前】
【納品前】
【翻訳前】
【チェック後】
※「品質管理担当」という言葉が使用されているのが誤解を招きかねないため補足すると、ここでは工程全体ではなく翻訳内容に関して管理を行う、その担当者を指しています。
このような各工程で仕様を満たすために行う個別の具体的な活動が品質管理で、その活動全体/体系的活動が品質保証です。
品質について、関係者間で共通の認識を持ち適切な評価を行うには、また、お客様の要求を満たす翻訳サービスを提供するには、「品質保証」「品質管理」といった品質にまつわる用語に関する正しい理解が欠かせません。この記事が翻訳品質に関する合意の形成、そして翻訳サービスにおける品質保証や品質管理に関する理解の一助になれば幸いです。
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